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土壌のはなし

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微生物のはなし
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微生物のはなし

もくじ

自然界の物質循環の立役者・微生物

 自然界の物質は様々な形で存在し、生態系内を循環しています。 生態系内の生物は大きく3つに分類することができ、それぞれ“生産者”、“消費者”、“分解者”と呼ばれます。

 土壌中の物質は、まず生産者である植物に吸収されます。植物が動物(消費者)に食べられることで、 物質は動物体内に移行します。やがて、物質は排泄物として動物の体外に出されたり、植物や動物の遺体内に留まったりします。 もし、ここで物質循環が止まってしまえば、世の中が遺体だらけになるとともに、やがて利用できる物質が枯渇し、 生物が生きられなくなってしまいます。そのようなことがないのは、分解者である“微生物”がいるおかげです。

 土壌内の微生物(菌やバクテリア)は、排泄物や遺体など(有機物)を分解し、物質を再び植物が利用できる状態(無機物) にしてくれます。また、土壌中にあるものの、植物が利用できない状態にある物質を、利用できる状態に変えてくれます。

様々な土壌微生物

 微生物とは、顕微鏡で見なければ観察できないような小さな生物の総称です。分類上の様々な生物を含み、 大きさも多岐にわたります。土壌の中には様々な微生物(土壌微生物)が存在し、複雑な社会を築いています。

 土壌微生物の中には、植物の病原となる菌も含まれます。土壌内の病原菌は、普段は他の土壌微生物と共存しつつ、 宿主(病気にかかる植物)に出会った時には、他の微生物(特に根圏微生物※1)との競合に打ち勝って、勢力を拡大し、 宿主に感染しなければなりません。
 病害を防ぐには、根圏の環境を健全にし、有害でない微生物を増やすことで、 その拮抗作用※2により病原菌を増やさないようにすることが有効です。

※1:根圏微生物

 根圏とは、植物の根の影響を受けている土壌領域のことで、植物の根から分泌される物質を利用する微生物が集まり、 活性が高い状態となっています。これらの微生物の中には植物にとって有用な働きをするものもいます。

※2:拮抗作用

 土壌中に様々な微生物が存在することで資源や空間が限られ、病原となる菌の繁殖が抑制される作用

土壌内の微生物相を整え、病害が発生しにくい環境へ

 農業では、同じ土地で同じ農作物を作り続けると、だんだん成長が悪くなることがあります(連作障害)。 この現象は、同じ作物により同じ栄養素ばかりが吸収され、土壌内の栄養バランスが崩れるために発生します。 連作障害を防ぐ方法として、同じ土地でいくつかの種類の農作物を順に作る“輪作”が知られています。

 輪作は、必要とする栄養素が違う作物を順に植えることで、土壌内の栄養バランスを保つ仕組みです。 また、輪作には土壌中の微生物相を変えることで、病原菌を攻撃するような微生物を優勢にする効果があり、 病害の予防効果が期待されます。
 例えば、インゲン、トマト、ジャガイモの地化部を侵すフザリウム菌(カビの一種)は、 コムギ、トウモロコシ、アルファルファといった作物と輪作すると、かなり減少することが知られています。

 普通、自然界では排泄物や遺体などの有機物が微生物によって無機物に分解され、 それが栄養素として植物に吸収されて物質循環が起こります。しかし、無機質の化学肥料ばかりを大量に使っていると、 土壌内の有機物が不足して、土壌微生物が減少し、植物が病気にかかりやすい土壌環境になってしまうので、注意が必要です。